震災による整理解雇

震災の影響で解雇や雇い止めが急増しています。
地震津波の直接的被害をうけ、事業所閉鎖あるいは無期休業に追い込まれているようなケースでは、整理解雇もやむを得ないと考えられるでしょう。
実際に私の関与先でも事業所のいくつかが壊滅し、人員調整の決断を迫られている企業があります。




一方で、震災を口実にした便乗解雇も増えていると聞きます。

そして先日、震災の影響を理由に従業員40人を解雇した宮城県の運送会社が、震災後初めて不当解雇で提訴されました。

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201104/2011041500938


判断が難しいのは震災の被害を直接受けたわけでなく、取引先の業績悪化による影響だったり、
一部の事業所閉鎖、一部従業員の削減を行う場合などです。



当然ながら日本では解雇は簡単には許されず、相応の理由が求められます。
そして、整理解雇の場合はさらに厳格な要件が判例によって形成されています(そもそも従業員側に責任がない為です)。
人事に携わったことのある方なら一度は聞いたことのある「整理解雇の4要件」です。

  1. 人員削減の必要性
  2. 解雇回避努力
  3. 人選の合理性
  4. 手続きの妥当性


会社が流されたなどの壊滅的被害をうけた会社であれば実際こんなことは言ってられないでしょう。
しかし、被災地以外の会社で、部品・原材料の不足、顧客や売上の減少、計画停電等の影響、休業や一部事業所閉鎖などにより整理解雇を行う場合であれば、上記4要件は厳格に考慮したうえで手続きを踏むべきであると考えます。
(そうしなければ不当解雇と判断される恐れが十分にあります。)





また、全国の労働局や労働基準監督署には、解雇に係る相談で人が殺到していると聞きますが、こちらにも疑問符がつきます。
会社としては解雇を行うための免罪符が欲しいところでしょうが、労働局・労基署は民事不介入が原則です。解雇について有効・無効の判断はできません。

加えて労働局・労基署は、会社に労働基準法を守らせ、労働者を保護するという本来の役割があります。解雇の相談は周りの専門家にするのが確実です。



ちなみに震災による整理解雇であっても、労基署に申請して認定を受けない限り、
30日前の解雇予告 or 30日分の解雇予告手当の支払いは必要になるのでご注意ください。



関連記事