人事制度に手をつけないリストラは失敗に終わる

景気低迷が続く昨今、経営者がリストラの判断を迫られる場面は珍しくありません。


以前の記事でも触れましたが、解雇は日本ではかなり厳しく規制されています。
JALが昨年末に行った整理解雇についても不当解雇で提訴されていますが、あれだけ追い込まれた状況下で綿密に手順を踏んで行ったと予想される整理解雇であっても、訴訟リスクをゼロにすることはできません。


整理解雇を正当化する要素の1つとして、解雇回避努力の程度があげられますが、実際には希望退職の募集が重要視されることが多いといえます。


希望退職とは、退職を希望する社員を募って会社都合の合意退職にもっていくことです。通常、割増退職金や有休買上げ、再就職支援などの条件をパッケージ化して一定期間募集をかけます。



ところがこの希望退職、本当にうまくいった会社があるのだろうかと疑うほどいい話は聞きません。


会社はほぼ確実に、ターゲットとなる辞めさせたい社員と、何としても会社に残したい社員をあらかじめ決めています。希望退職の募集と平行して全社員と個人面談を行い、辞めさせたい社員の退職勧奨、残したい社員の慰留を全力で行うのです。


お分かりかもしれませんが、結果的には全く逆、辞めさせたい社員は1人も辞めず、何としても残したかった社員がゾロゾロ辞めていくパターンが多いといわれます。

会社が残したいと思う社員は通常、有能で市場価値が高く、再就職への不安もありません。加えて、賃金制度・人事考課制度に対して実力主義的要素を強く求めます。もしも有能で市場価値の高い社員が会社の既存の人事制度について不満を抱いていた場合、有利なパッケージで希望退職の募集があれば、転職の背中を押されたようなものです。

会社は一時的に人件費が減って窮地を脱したかと思いきや、予想以上に生産性が下がり、根本的な問題は解決されないまま、またいずれリストラの判断を迫られる日がやってくるのかもしれません。



希望退職の募集は単なるコストカット・人員削減ではなく、人材戦略の一環と考えるべきです。


賃金・退職金制度、キャリアパスは会社の人材戦略にマッチしているのか

会社の求める人材像は評価制度に反映されているのか

会社の求める人材を会社に残すためには人事制度改革は必須といえるでしょう。




関連記事