厚生年金の加入要件緩和の是非

厚生労働省非正規労働者の厚生年金の加入要件緩和を検討しているようです。


以下参照
http://www.47news.jp/CN/201105/CN2011052101000820.html



現在のところ、1日または1週間の労働時間と1ヵ月の労働日数が正社員の概ね4分の3以上である場合、パートタイマー等であっても社会保険(健康保険+厚生年金)に加入させることは会社の義務です。



しかしながら、現実はそうはなっていません。
加入義務があるにもかかわらず社会保険に加入していない事業所の割合は3割にのぼるとも言われています。

社会保険料は会社にとってかなり重い経費です。
「法律通りに社会保険に加入すれば経営が立ち行かない」
そう考え、違法と知りながら社会保険に加入しない経営者もいます。



社会保険未加入の会社には、会社自体が社会保険に加入しないパターンと、会社は加入しているが一部の労働者を加入させないパターンがあると思われます。
前者の場合は行政が実態を把握するのがなかなか困難ですが、後者の場合は調査が入って未加入を指摘される可能性も高いでしょう。



それにしても、なぜ社会保険に加入しない会社がそんなにも多いのか。
健康保険法および厚生年金保険法には、加入手続きを怠った場合の罰則が一応定められています(6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金)。

ところがこの罰則、適用されることはあまりありません。

会社自体が社会保険に加入しなければ、保険料の負担はない、罰則も適用されない、
であれば経営の厳しい零細企業が加入しないのもうなずける話ではあります。




今回の厚生年金の加入要件緩和の検討内容は具体的には

  • 労働時間が週20時間以上
  • 雇用期間が31日以上

となっており、
実現すれば100万人以上の非正規労働者が新たに社会保険の対象となるわけですが、それらは一体何をもたらすのか。

今まできちんと加入していた会社が社会保険を維持できなくなるかもしれません。
未加入の会社にとってはますます加入のハードルが高くなりそうな気もします。
加入要件が拡大されようがお構いなしに加入させない会社もあるでしょう。
一方で苦しい経営のなか苦労して従業員を社会保険に加入させる会社もあるのかと。

労働者側においても、少ない給料からさらに多額の社会保険料をとられたくないという理由で加入を希望しないパートタイマーもいると聞きます。


いずれにしても制度の公平な運用を担保できない状況下で、加入要件の緩和だけを検討することに一体何の意味があるのか、私にはわかりません。




関連記事