精神障害による労災の増加 企業を悩ます「心の病」

14日、厚労省から2010年度の脳・心臓疾患および精神障害などの労災補償状況について発表がありました。発表によると、業務上のストレス等でうつ病などの精神疾患精神障害を発症し、労災認定を受けた件数は308件で過去最多、さらに精神障害による労災請求件数は1,181件で2年連続過去最高の数字となったようです。

以下、厚労省の資料
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001f1k7.html


これは注目すべき数字です。


念のためですが、この精神障害による労災は、10年前には認定件数が現在の10分の1(請求件数は5分の1)、さらに20年前にはほぼゼロでした。

まあ考えてみれば、当時は経済も今ほど悪くない、携帯電話も今ほど普及していない、成果主義もない世の中でした。

働く環境は一変し、労働者の体と心に過重負荷がかかり、最近は本当にうつ病を発症して休職する方が多いと感じるようになりました。



ではポイントをいくつか


従来、「心の病」は私傷病として扱われることがほとんどで、療養のための休業は休職制度を利用し、生活費は健康保険から傷病手当金を受給し、就業規則で定めた期間を満了すれば休職期間満了で退職、ということになったと思われます。

しかしながら、労災認定されれば休業期間中は解雇はできません。さらに前回も書きましたが、労災は会社の責任が明確になるため、労災と別途で慰謝料を請求される可能性が高いでしょう。


また、労災の認定率が若干上がっています。行政は明らかに多くの職場において業務上の心理的負荷が精神障害を引き起こす具体的な危険が内在するという認識のもとに、精神障害に係る労災認定の判断を慎重に行っているものと思われます。


そして、「心の病」を引き起こす最も大きな理由はやはり人間関係です。前回の記事でセクハラの労災に関して触れましたが、今後企業のスタンスが最も問われてくる重要な問題は間違いなくパワハラだと考えられます。パワハラの対策は難しく、まだ多くの企業において進んでいないのが実情ではないでしょうか。


今回の発表で請求件数、支給決定件数ともに過去最高ということでしたが、今後さらに増加していくことが予想されます。休職規定の内容を再度見直すことも当然必要かと思われます。「心の病」対策はリスク管理の側面だけでなく、人材戦略の観点からも企業にとって非常に重要なものとなるでしょう。



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