退職金制度を考える

退職金制度改定ラッシュは落ち着いてきたようです。

来年3月末で適格退職年金の税制上の優遇措置がなくなるため、多くの企業はここ数年の間に他制度への移行を終わらせたものと思われます。

また、多くの企業において退職金そのものへの考え方は大きく変わりつつあります。金額を大幅に減額したり、制度自体を廃止したり、あるいは算定方式を大きく見直す企業もあります。



私も現在、関与先の退職金制度の見直しにあたり、新制度の設計をようやく終わらせて移行手続きを進めているところであります。



退職金制度を考える際に最も重要なことは、制度が会社の人材戦略にマッチしているのかどうかということです。

「そもそも退職金は必要なのか」
「何の為に退職金を支給するのか」

ということをゼロベースで考えてみるのがよいと思います。

一般的に退職金は従業員のモチベーション向上よりも長期勤続の奨励、定着率の向上に対する効果の方が大きいものと考えられます。

あまり長期勤続を推奨せずに適度に新陳代謝を求めている会社の退職金支給額が定年までの累進的カーブを描いていたり、あるいは入社から熟練・貢献までの時間がかかる職種であるにもかかわらず受給可能な最低勤続年数が短かったりするのは、人件費の配分としては有効とはいえません。



退職金の支給水準については大幅に減額したい企業が当然多いのですが、その場合には自己都合退職の場合の減額率を引き上げることによって、比較的従業員の反発を受けずに改定を行うことが可能と思われます。(※大企業など中途退職者の少ない企業は効果が薄いですが)



算定方式の傾向は、基本給連動方式(最終給与比例方式)を廃止するところがほとんどではないかと思われます。この方式だと会社が支払い義務の発生している退職金の総額を管理するのが難しく、また、賃金をベースにすると賃金制度そのものに悪影響を与える可能性がある為です。

近年は、年齢や資格などに応じたポイントを毎年積み上げるポイント制退職金制度を導入する企業が主流と思われますが、最近では成果主義の流れから、確定拠出年金をベースとした業績連動型退職金制度も増えていると聞きます。(※これらの制度の場合、一方的な不利益変更ではないという説明もしやすいです。)

貢献を退職金に反映させるのかという点は退職金制度を考えるうえで非常に重要なポイントですが、賞与制度や賃金制度との整合性やバランス、そして人事制度全体のコンセプトを考慮し、トータルで考えることが必要です。



これらの基本的事項が固まってくれば、次は現実的に導入が可能なのかという資金準備の話になってきます。退職金に関しては外部積み立ての様々な準備制度がありますが、また次の機会に詳しく書きたいと思います。




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