求人広告と実際の労働条件が違うときのポイント

求人広告を見て応募したが、入社したら求人広告に載っていた募集要項と実際の労働条件が違っていたというのはよくある話です。

特によく聞くのは、「給料が聞いてたものより低かった」、「勤務時間が長い」「完全週休2日と書いてあったが、隔週で土曜出勤だった」、「正社員でなく契約社員にされた」「知らないうちに残業手当が給料に含まれていた」等です。


求人内容と採用後の労働条件が異なるのは違法ではないのかと疑問に思われる方もいらっしゃるでしょうが、端的に言えばこれは違法ではありません。


企業が従業員を募集するためにハローワークに求人票を出したり、新聞折込やインターネットの就職・転職サイトに求人広告を載せるのは、法的には「労働契約の申込みの誘引」という性質のものであり、そこで掲げられた労働条件はあくまでも見込みということになります。

ですから求人広告を見て応募したからといって必ずしもその内容で労働契約が成立するわけではありません。

契約の当事者たる会社と労働者との間で特段の合意があれば、求人内容とは異なる労働条件で雇入れることも可能です。

ただし、これはあくまで結果的に条件を変更することで合意したという話であって、最初から違う条件で雇入れることを意図して求人広告を出すのは悪質であり問題がないとはいえません。

職業安定法は、虚偽の広告、虚偽の条件の提示によって労働者を募集した場合の罰則を設けています(第65条第8号)



合意があったかどうかというのが最大のポイントになるわけですが、トラブルを未然に防止する観点から、会社は次のことを注意すべきです。


労働契約を結ぶ際に会社は労働者に対して労働条件を書面で明示しなければなりません(労働基準法第15条)。この書面を「労働条件通知書」といいますが、雇用契約書を交わす方法でも問題ありません。

以前の記事で書きましたが、労働条件通知書を交付せずに口頭で説明するだけで済ませる会社が現在も少なくありません。

※以前の記事はこちらです。
労働条件通知書 - 人事労務コンサルタントmayamaの視点


求人内容よりも不利な条件で労働者を雇い入れた後、労働条件について言った言わないの争いが生じた場合、最初に労働条件通知書を交付していなければ会社の立場は厳しいものになると考えられます。

労働契約自体は口頭だけでも有効に成立はしますが、求人内容と異なる条件で合意したことについて会社は証明することができません。

会社が募集した際の求人票または求人広告が残っていれば、そこに記載された内容が労働条件になると判断された裁判例があります。


求人内容と異なる労働条件で採用する際には、労働条件通知書の交付はいつにもまして特に重要であるといえるでしょう。




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