安全配慮義務違反(債務不履行)でも弁護士費用を請求可能とする判決

先月の最高裁判決です。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120224145519.pdf


労働者が会社の安全配慮義務違反を理由として債務不履行による損害賠償を請求した訴訟において、労働者側が要した弁護士費用を含めて会社が賠償するように命じられました。

実はこの判決は注目すべき判決です。


安全配慮義務」は労働契約に付随して会社が労働者に対して当然に負う義務であり、労災のときなどによく問題となりますが、これに違反することは債務不履行責任にあたります。


過去の最高裁判例において、不法行為に基づく損害賠償訴訟の為に必要な弁護士費用は損害として賠償の範囲に含まれるものとされてきました。

一方で、債務不履行の場合ですが、金銭債務の不履行による訴訟に必要な弁護士費用については賠償の対象にならないとされてきました。

そして、金銭債務以外の債務不履行の場合についてはまだ明確な判断はなかったのです。


今回の最高裁の判決では、会社の安全配慮義務違反(※金銭債権以外の債務不履行責任)に基づく損害賠償請求権を労働者が訴訟上行使するためには、弁護士に委任しなければ十分な訴訟活動をすることが困難な類型に属する請求権であるとして、弁護士費用を相手方に請求できると判断されました。

不法行為の場合と同様に訴訟が難しいタイプだから認めるとなったわけです。


過労死・過労死自殺の労災認定が急激に増加している昨今においては、労使双方にとって非常に重要な判決だといえるのではないでしょうか。