JAL整理解雇「有効」判決をみて思う事

先週、会社更生手続き中の日本航空から整理解雇されたパイロット76人が解雇無効を訴えて争っていた裁判の判決が、そして翌日には同じく整理解雇された客室乗務員71人が争っていた訴訟の判決がそれぞれ東京地裁でありました。いずれも解雇は有効であると判断されました。労働者側は控訴するようです。

朝日新聞デジタル:日航の整理解雇は有効 パイロットら敗訴 東京地裁判決 - 就職・転職
http://www.asahi.com/national/update/0330/TKY201203300391.html

会社更生手続き中の整理解雇をめぐる司法判断は今回が初めてでした。JALが一昨年に経営破たんするまでの経緯はニュースなどで見てきている方が多数ですから、一般的な世間の視点でみて特段驚くような判決ではなかったと思われます。

「業績が悪くなったらリストラされるのは当たり前だ。今まで散々優遇されてきて公的資金まで導入されているのに、クビ切られた途端何を言い出すんだ。」といったところでしょうか。


個人的に思ったことは、このJALの判決をみて「経営が厳しければ整理解雇も意外と認められるようだ」と安易に考えない方がよいということです。特に中小企業は。

JALは言わずと知れた大規模企業です。整理解雇の実施に踏み切るにあたっては労働法専門の著名な弁護士に依頼し、整理解雇の要件を充足できるよう徹底的に準備を重ね、リスクを極力低減させて万全の態勢で臨んだはずです。

解雇のハードルの高さについてはこのブログで何度も触れていますが、整理解雇は労働者に全く非のない解雇であるため、解雇の中でも別格に要件が厳しいのです。

整理解雇の有効性の判断にあたっては

①人員削減の必要性
②解雇回避努力を尽くしたか
③人選基準の合理性
④手続きの妥当性(労組との協議等)

の4つが総合的に考慮されるということはご存知の方も多いと思いますが、今回のJALは、労働組合との交渉を重ねてきていますし(内容の妥当性まではわかりませんが)、整理解雇対象者は過去の病気欠勤・休職実績や年齢を基準に選定されており、また整理解雇の前段階で1500人の希望退職を募るなどして人員削減努力をしてきています(だから整理解雇は有効なんだと言えるわけでなく、それらが最低条件ではありますが)。そもそも経営破たんして会社更生法を申請した会社の整理解雇ですから、あくまで例外と考えておいた方が無難です。

間違っても経営が厳しいとか、部門縮小・撤退するという程度の理由で専門家に相談もせず安易に整理解雇を決行しないことです。トラブルになった時のことを考えると、到底割に合いませんので。



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