サマータイム制度導入と就業規則の改定

ここ最近、朝6時台でも電車が心なしか混んできたように感じます。夏の節電を見据えて早くもサマータイム制度を実施し始めている会社が増えているからでしょうか。


大半の企業で導入されているサマータイム制度は、1日の労働時間数に変更はなく、始業・終業時刻を早い時間帯に前倒しするかたちで実施されているものと推測されます。以前にも書きましたが、これを実施するのであれば当然就業規則の改定は必須であると考えられます。(労働時間数や賃金の変更がある場合にも改定が必要なことはいうまでもありません。)

そこでよく言われるのが、どこの会社でも就業規則の労働時間規定のところに通常記載されている

「業務の都合により、始業・就業時刻、休憩時間を繰り上げ、または繰り下げることがある。」

という条文の解釈によって、就業規則を改定せずにサマータイムを運用できないかということですが、この規定の解釈によって運用できるのはせいぜいサマータイム制度導入の検討にあたって試験的に数日〜1週間程度繰り上げる場合に限られるものと考えるべきです。

始業・終業時刻は労働者にとって重要な労働条件であり、労働契約を構成する要素の1つです。たとえトータルの労働時間が変わらないとしても、出勤時間を早めることによって不利益を感じる労働者も相当数いるということを前提に考えなくてはなりません(幼児の送り迎えが必要な場合など)。

会社が少なくとも夏季の数ヵ月にわたって始業・終業時刻の変更を一定の労働者に一律適用させるということであれば、それは業務の都合による繰り上げではなく、れっきとした労働条件の変更であり、労働者によっては不利益変更に該当するものと考えられます。

不利益変更ですから、就業規則の変更にあたっては制度導入の必要性を従業員に十分に説明したうえで、一人ひとりから同意書をとっておくべきであると考えられます。

就業規則変更届、労働者過半数代表の意見書添付のうえ管轄の労働基準監督署に届け出る点については通常の就業規則改定と特に違いはありません。



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