厚生年金の未加入が今後厳しくなる件 <厚労省が告発・企業名公表を検討>

GW中のニュースですが。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120504-00000007-mai-pol


記事によれば、ここ数年は厚生年金に未加入の事業所数が10万前後で推移しており、厚労省は3年以内に半減を目指すとのこと。加入はしているが保険料を滞納しているという企業は、警察への告発の対象としないそうです。

これまで社会保険の未加入問題に関しては無法地帯といってもいいくらいの状態でした。会社を含む法人組織は人数に関わりなく社会保険の加入が義務付けられていますが(※個人事業主の場合は常時従業員5人以上)、経営の苦しい企業や法人成りしたばかりで余裕のない企業、あるいは業績は悪くないにも関わらず高い保険料を払いたくないという悪質な企業など、違法と知りながら加入を逃れているケースは現実には珍しくありません。


ちなみに今までは罰則がなかったのかというとそういう訳ではなく、「6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金」という罰則が法令上定められているのですが、実際に適用される例はほぼなかったため、実質的に罰則はないに等しかったわけです。

行政(日本年金機構)の立ち入り調査などによって未加入が発覚し遡って加入手続きをとって保険料を支払うよう指導されることもありますが、調査そのものの頻度が少ないため(※最近増えてきたとは言われていますが)、事業主はいまいち未加入のリスクについて危機感を持たない状況だったといえます。

現場の年金事務所においても、加入率ではなく徴収率が重視されてきたことから、企業自体が適用手続きをとっていない場合は無理して加入させてなくてもよいと考える傾向があったものと思われます。

我々としては、法令上の摘発のリスクよりも、損害賠償などの実質的な金銭リスクを会社に説明して加入を促すより他にありませんでした。


社会保険未加入の実質的な金銭リスクについては以前の記事を参照
社会保険に加入しないリスク - 人事労務コンサルタントmayamaの視点



今これだけ未加入企業が増加したのは、加入しなくてもお咎めなしという環境をつくり、実質的に加入逃れを見過ごしてきた国の責任であることは間違いありません。

悪化する年金財政の補てんの為なのか、厚生年金加入要件の拡大などの話が現在進んでいますが、制度の公平さが担保されない限りどんな施策を講じても所詮効果は薄いと思います。そういう意味では今回報じられた厚生年金未加入を厳罰化するという厚労省の方針は、色々な思惑はあるとはいえ、方向性としては評価できる動きだと個人的には思います。


問題は今後はたして企業名の公表や警察への告発といった対応が、どのような事業主の悪質性を基準として実際にどの程度実行されていくのかというところです。

また、加入事業所についても今後は「4年に1度は調査を実施し、従業員の報酬など加入状況が適正かどうかを確認」していくと言っていますから、加入させている企業も安心という訳ではなく、算定・月変などの普段の事務手続きをミスのないように注意しなければ、思わぬところを指摘され、遡って修正・届出、保険料追加徴収、さらには再年末調整なんてことになり、企業の負担は膨大なものとなりかねません。

数字の目標を明確にうちだしているあたりに厚労省の本気度も伺えます。今後おそらく年金事務所による調査の頻度は増え、内容もますます厳しくなっていくことが予想されます。社会保険の取扱いをおざなりにしている会社は体制の整備が急務といえそうです。



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