請負・業務委託と直接雇用(労働者)の判断基準

企業は雇用リスクを回避する手段として、雇用契約ではなく請負(業務委託)という法形式を使うことがよくあります。

雇用リスクとは

社会保険などの加入義務
労働基準法等に定められた義務(残業代、有給休暇、最低賃金、安全衛生など)
・ 解雇した場合の訴訟リスク

などのことです。請負の外注扱いにしてしまえばこれらの雇用リスクは生じません(※安全衛生や労災の義務は一部発生しますが)。


加えて最近は、派遣法の改正(30日以内の日雇い派遣禁止)、労働契約法の改正(有期雇用の上限5年規制)など企業の人件費の柔軟な調整を妨げるような法改正が相次いでいます。

派遣法改正によって、事業の軸を人材派遣から請負にシフトしている人材会社も少なくないと思われますし、また、有期雇用の5年超え無期転換ルールについては6ヵ月以上のクーリング期間が設定されている為、その期間を一時的に請負・業務委託にしてしまう会社も今後現れるかもしれません(このやり方は脱法手段であり認められない旨が通達されています。)



しかし、たとえ請負契約という名称の契約を締結していたとしても、結局は実態が全てです。労働基準法上の労働者に該当すると判断されれば、いくら請負だ、業務委託だと主張したところで偽装請負とみなされ、労働者としての取扱いを求められます。とりわけ個人事業主への外注に関しては十分に留意する必要があると思います。

これは請負業者、個人事業主などの「労働者性」の判断といえる問題ですが、請負と労働者の線引きはなかなか難しい問題です。

日本では、労働者派遣は派遣法、職業紹介や労働者供給は職業安定法といったようにそれぞれ規制する労働関係法令がありますが、請負を直接規制する労働法はありません。個々の通達や判例などを参考に個別に判断する必要があります。



労働者性の判断基準については様々ありますが、特に重要なことは「使用従属性」があるかどうか(※つまり指揮監督下の労働なのか、そして報酬が賃金として支払われているかどうかの2つ)ということになります。

特に重要と思われる項目を以下に挙げます。


労働者に該当すると判断されるポイント
1.業務の内容・遂行方法について具体的に指示・命令を受け管理されている。
2.勤務時間、勤務場所を指定され管理されている。
3.報酬が時間をベースに計算されている。


労働者ではないと判断されるポイント
1.仕事の依頼や業務指示に対して諾否の自由がある。
2.他者との代替性が認められている。


これらが機械的にあてはめられるのではなく総合的に考慮されることになります。

過労死や精神疾患、業務上の事故などが発生すれば、労働者なのか請負なのかによって企業の責任、本人や遺族の負担は全く異なってくる大問題です。当然ですが、偽装請負のリスクは決して小さくありません。




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