給与計算は税理士、社労士、アウトソーシング会社、どこに委託すべきなのか

自社の給与計算業務を外部にアウトソーシングしようと考えた場合、委託する相手の選択肢は税理士、社会保険労務士、給与専門のアウトソーシング会社など色々考えられますが、一体どこに頼むべきなのかいまいち判断しかねるものと思われます。

率直にいって従業員数が数名程度の小規模な会社で、かつ社会保険料などの細かい点にはそこまでこだわらないが安い方がよいということであれば税理士に委託するのがよいと思います(源泉税はプロなので最も正確です)。

小規模な会社は必ず顧問の税理士をつけているものであり、顧問税理士であればほとんどサービスで(無料 or 顧問料プラス5千円〜1万円程度)で給与計算もやってくれる場合があります。

ただし、税理士によっては給与計算を全くやらない、またはあまり積極的には対応しないというケースもあるかもしれません。給与に対応しない税理士はどちらかというと事務手続的な業務よりもコンサル業務に重点を置いている可能性があります。

また、労働保険・社会保険などの手続きについても対応する税理士はいます。これは厳密にいえば社労士法違反になりますが、現実にはあまり問題になることはありません。ただし、専門外であることから手続きの正確さにおいては保障できませんので、やはり正確性にはこだわらる場合は社会保険労務士に頼んだ方がよいと思います。



会社の規模が十数人〜数百人になっていった場合、また、数名であっても保険料や残業代の正確さを求めたいという場合には社労士に委託した方がよいと思います。

なぜなら給与計算業務において最も間違いが散見される箇所が、社会保険料の計算、および労働時間等の計算であり、これらを専門領域としているのが社会保険労務士だからです。

社会保険料の計算については、毎月の月額変更が本当に法令通り正しく行われている会社は意外と少ないですし、他に以下のような点について間違いが多いと思われます。

社会保険料の控除のタイミング(入社・退職時、育休開始・終了時、64歳・70歳・75歳到達時など)
介護保険料の控除のタイミング(海外出向時、40歳・65歳到達時など)
退職月の賞与の社会保険料
退職後の賞与の雇用保険
定年到達時の同日得喪

勤怠集計面においても、残業時間(法定内・法定外)のカウント方法、変形労働時間制の残業集計、残業代単価と月平均所定労働時間数の計算方法、所定休日と法定休日の取扱い、振休と代休の取扱いなど、社労士でなければなかなか正確に計算できない点が多々あります。

また、労働保険・社会保険の手続き面についても、数名の会社であれば入社・退社時の手続きくらいしか発生しませんので税理士でも十分対応できますが、規模が大きくなれば様々な手続きが発生しますので、給与計算と併せて社労士に委託する方が効率的だといえます。



さて、企業規模がさらに拡大し、千人を超えるような規模になってきたら、はっきり言って社労士の手に負えなくなってくると思われます。

社労士は通常、パッケージの給与計算ソフト(or 特有の社労士システム)によって業務を行うのが一般的ですが、千人規模の会社になれば、パッケージよりも独自の給与システムを構築するのが適切と考えられますから、システム開発から給与計算実務までトータルで手掛ける給与計算アウトソーシング業者に委託するのがベターだと思われます。

このようなシステムに強い給与計算会社であれば、勤怠システムからウェブ給与明細まで連携したシステムでサポートしていますし、システムに問題が発生しても迅速に対応してくれます。また、これらの業者は一般的に税理士や社労士よりも大規模組織化されている為、人員面においても安定しています。

ただし、このようなアウトソーサーは、素人同然のような経験の浅いスタッフをマニュアル教育によって大量動員する手法をとることが多々あり、実務能力面においては疑問を禁じえない業者も実在します。

その意味では、委託の前にシステム・組織面だけではなく、スタッフの実務能力、品質面を十分に精査することをお勧めします。もちろんアウトソーシング会社が労働保険・社会保険の手続きを代行すれば違法となることはいうまでもありません。




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