不当労働行為の救済命令を無視

企業が不当労働行為の救済命令に違反した場合には、法律で罰則が定められていますが、今回はそんな形式的な話ではありません。


牛丼チェーン「すき家」を運営するゼンショーが、団体交渉拒否について謝罪し、解決金を支払うことで労働組合と和解したというニュースです。

http://www.47news.jp/CN/201212/CN2012122501002069.html
ゼンショーが団体交渉拒否を謝罪し和解 : J-CASTニュース

さかのぼるとこの事件はすき家を解雇された女性アルバイト従業員が一般労組である「首都圏青年ユニオン」に個人加入し、未払い残業代を求めて団体交渉を求めたところ、ゼンショー側が「一般労組は労働組合と認めない」という理屈で団交を拒否したことが発端です。

その後、労働組合は「東京都労働委員会」に救済の申立てを行い、争いの場を「中央労働委員会」、「東京地裁」と移していき、会社側は団交を拒否し続けますが、ことごとく会社側が敗北していきます。

※この辺は以前の記事も参照
合同労組の団体交渉申し入れを拒否できるのか - 人事労務コンサルタントmayamaの視点

結局、東京高裁でも敗北し会社側は4連敗中で、最高裁に上告していたところだったようです。おそらく争い続けても会社側に勝ち目はなかったのだと思います。

元従業員と労働組合は会社に対し損害賠償300万円を求める訴訟を別途提起し、その訴訟において今回和解が成立したため、団交拒否の正当性について争っていた訴訟についても上告を取り下げたということです。



それにしても、団交を拒否してから今回の和解まで、約5年弱という年月です。

いくら和解が成立したといっても、交渉を始めるまでに5年弱かかるというのは長すぎます。

ここで一番感じることは、労働委員会が行う不当労働行為の審査って、時間かかりすぎなんじゃないのか、それで本当に意味あるのか、ということです。

通常、労働委員会は救済の申し立てを受けてから審査を行い、救済命令を発するまで1年半かかるといわれており、2年くらいかかることも珍しくありません。審査に不服で中央労働委員会に再審査を求めれば、さらに時間がかかります。

そうして長い時間をかけてやっと出た救済命令が、今回の事件のように簡単に無視されてしまっては、不当労働行為審査制度の存在意義自体が疑われるところです。

現状、労働者側は、企業が救済命令を無視してくる可能性もあり得ることを前提に、その場合は訴訟で争うことも選択肢に入れて不当労働行為の救済申立てをしなければいけないということになります。


ただし、「では逆に、企業側は訴訟の覚悟があれば救済命令を恐れなくてもよいのか」と聞かれれば、全くそんなことはありません。

今回の事件で会社側はおそらく膨大な弁護士費用を使い、結果的に解決金も支払って謝罪し、そして何より団体交渉に応じないという態度によって企業イメージを落としたことは明らかです。

そして5年弱労力を費やしたうえに、これからまた団交に応じるわけです。

「個人加入の一般労組・合同労組からの団体交渉申し入れは拒否できない」

企業側は肝に銘じるべきです。




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