<解雇規制緩和論>人員整理と戦力外通告が混同されているのでは

昨日の記事に引き続きですが、最近の解雇規制緩和の報道について、様々なものがごちゃ混ぜに論じられている為に感じる違和感を書きたいと思います。

解雇規制の緩和とひと口に言っても、企業の業績不振の際に雇用調整をはかるために行う整理解雇と、労働者の能力不足や成績の不振等を理由とする解雇(いわば戦力外通告的解雇)では全く性格が異なりますから、解雇規制緩和に際してもそれぞれ別個に検討しなければならない問題です。

しかしながら、政府の有識者会議の主に経営者の方の意見を聞いていると、まるでこの2つを一緒くたに論じているようで、つまり業績不振のため余剰人員の整理をはかる場面において、勤務態度や成績の悪い労働者を優先的に辞めさせられる仕組みが必要だという主張がなされているようです。


整理解雇はあくまでも業績不振という会社の経営上の都合によって行わざるを得ない解雇であり、労働者には全く落ち度はありません。ですから解雇人員の選定に際して特定の労働者個人が取り上げられ、その人の解雇の可否が検討されることなどあり得ないのです。

特定の個人の能力・成績や勤務態度等を検討した時点で、それは会社都合の整理解雇ではなく労働者都合の解雇となるのであり、解雇の要件として求めらる客観的合理性についても経営上の必要性という要素ではなく、その労働者の能力不足が解雇に値するほど合理的な理由となり得るのかという観点から考慮されなければならない訳です。もちろん解雇回避努力に関しても、この2つの解雇では別のものが求められます。


「業績不振でおまえに任せる仕事がなくなった」から解雇なのか、「おまえは使えない。払ってる給料分の働きがない」から解雇なのかは全く違う問題であって、解雇の有効性を測るものさしも違うのです。それを一緒くたにすれば整理解雇の名目で会社が気に入らない労働者を好き勝手にクビにしたというような不当解雇トラブルが頻発するでしょう。理屈抜きでとにかく解雇を容易にしたいというのが本音なのかもしれませんが、政府の有識者会議という公的な場で法政策を論じるのであれば、もう少し考えて発言をしてもらいたいと思うところです。




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