休職期間を安易に延長すべきではない

休職制度は解雇リスクを避ける意味でも企業にとって大変重要な制度ですが、悩ましいのは休職期間の終了時期が近づいてきた復職間際のところでしょう。

本人の復職の意思を確認し、意思アリであれば職場復帰可能を証明する主治医の診断書を提出してもらい、さらに産業医もOKを出してくれれば申し分ありません。

ところが、休職期間終了ギリギリまで休職していた従業員がそう何の問題もなくスンナリと復職できるとは限りません。本人も復職するのかしないのか要領を得ない態度で、傷病は完治しておらず医師の証明も微妙という状況もあります。このような場面では会社もなかなか判断をしたくありません。会社の就業規則の休職規定には大抵、

「会社が必要と認めたときは延長できる。」

という文言が入っています。「とりあえずもう少し延長をして様子を見るか」と結論を先延ばしする会社も少なくないように感じます。

しかし、これはやってはいけないことです。何が問題かというと、「なぜ延長したか明確に説明できない」ということです。延長は特段の事情が存在しない限りするべきではありません。特段の事情とは極めて近い将来傷病が治癒し復職できるという具体的な見込みです。

休職は解雇を猶予する制度であり、どの程度まで猶予するのが適切かは企業の事情によって異なりますし、復職可否や延長の判断は企業の裁量によって判断するものであることは確かですが、企業ごとにそれぞれ一貫した判断をしていかなくてはなりません。

「とりあえず延長」を1回やれば、今後、微妙な案件では何度も延長が必要になるかもしれません。従業員側に過去の延長を指摘された時に、延長する・しないの明確な基準をきちんと説明できるでしょうか。ある労働者は延長なしで休職期間満了退職、一方、ある労働者は何度か延長したうえ完治し復職、それを曖昧な基準で判断されたらたまらないということになります。復職可否の判断は労働契約の終了を左右するものであり、一歩間違えればすぐに訴訟沙汰になるということを忘れずに慎重に判断したいところです。