「代休を繰り越す」「振休がたまる」は法律違反なのか

休日出勤の多い会社からこんな相談を受けます。

「代休がたまってすごい日数になってしまった。今さら買い取るのも難しい。どう消化させたらよいのか。」

こうした質問を受けたとき、まず最初に確認することは、代休がなかなか取れないのはいいとしても、休日に働いた分の給料をいったん支払っているのか、ということです。

支払わずに月をまたいで繰り越しているのであれば、その時点で労働基準法違反になります。

おそらく上記のような会社は、「休日出勤が発生したら後で代休を取らせて賃金を相殺する予定だから、給料日が到来しても別に休日出勤手当は支給しなくてよいだろう」と考えています。

しかし、実はその考え方は大きな間違いであり、社員が代休を取得する権利(もしくは、会社が社員に対して代休取得を命じる権利)は、賃金計算期間を越えて繰り越すことはできたとしても、それによって休日労働の分の賃金の支払いまで猶予することはできないのです。

つまり、代休は半年後に取得しようが、1年後に取得しようが、ある意味会社が自由にルールを決めればいいのですが、代休の分の賃金を差っ引くのはあくまで代休を取得した時でないとダメだということです。まだ、代休を取っていないのに休日労働分を支払わない行為は、「代休がたまっている」のではなく、単に「賃金を支払っていない状態」なのであって、賃金未払いにより労働基準法第24条に違反するということです。

法律的に考えて「代休を取得する権利」がたまることはあるかもしれませんが、「賃金支払いを猶予したまま月を越えて代休がたまる」という状況は本来あり得ません。


あと、一般的に「代休」と「振替休日」の違いが正しく認識されているケースは少ないのですが、「振替休日がたまる」という言い方を聞くこともあります。振休はそもそも事前に振り替える勤務日と休日とがそれぞれ特定されていることが前提です。「いつ休むのか決まっていない」振休など本来あり得ません(候補日を複数に絞っておくことはあり得ますが)。したがって、振休がたまるというのは理屈としてかなりおかしい状況です。多分、振休を代休の意味で使われているのだと思います。


以上から、いわゆる「代休がたまっている」会社は、労基署に勧告を受ける前に「休日労働分の賃金をいったん全て支払う」か、もしくは「一刻も早く代休の取得を命じてすべて消化させる」ということ早急に求められます。