定年制復活は何を意味するのか

マクドナルドの定年制復活の記事は目を奪われた方も多かったのではないでしょうか。

マクドナルドが当初定年制を廃止したのは、実力主義の意識を高めることが目的でした。

年功序列を廃止し、その一環として定年制を廃止することによって、会社が実力本位であることを社員に明確に示すことになり、若手のモチベーションを高めることができると考えたようですが、実際は思惑通りにはいかず、ベテラン社員が自身の成果を優先してしまい、結局は若手をうまく育成できなくなってしまったとのことです。



ここから先は一般論として話をしたいと思います。

高齢者雇用安定法の改正にともなって定年制を廃止した企業は2.8%といわれていますが、日本で定年制を廃止して業績を向上させていくことは絶望的に難しいと思います。



定年制をなくすということは年齢差別をなくすことにほかなりません。賃金の決定や採用・退職に関して年齢的要素を一切排除するということです。年功序列は当然に廃止です。

そして前提となるのが、定年制が廃止されれば何歳になっても働ける反面、定年までの雇用が保証されないということです。

何歳になっても働けるというのは、年齢に関係なく実力があれば60代・70代になっても退職する必要がないということであり、裏を返せば実力のない者は20代でも30代でも退場を余儀なくされるということです。

これらの事項が担保されなければ、会社が実力本位であることを社員に示し、実力主義の意識を高めるという結果にはつながらないと考えられます。


しかしながら、日本においては判例の積み重ねで確立された解雇権濫用法理によって解雇が厳しく制限されており、労働者の能力や成果を理由とする解雇のハードルは相当に高いというのが実情です。一方で日本の雇用慣行は現在でもまだまだ新卒一括採用、終身雇用、年功序列を基本としている部分が多く、労働市場流動性は極めて乏しいといえます。

前述の実力主義の意識を高めるための定年制の廃止という考え方は、日本の雇用システムにおいては相容れないものであり、結果的には全社員の雇用契約がエンドレスで続いていくことになり、採用活動を通常通り行えば毎年恐るべき額の人件費が加算されていくのは火を見るより明らかです。定年制廃止のハードルは極めて高いものといえます。



なお、いったん廃止した定年制を復活させることは労働条件の不利益変更にあたると考えられますので、定年制の廃止を検討する場合はこの点についても注意が必要です。



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