退職勧奨のリスク

サイバーエージェントが10月から導入した新しい人事制度が波紋をよんでいるようです。

「ミスマッチ制度」といわれるもので、下位5%にあたるD評価を2回受けた従業員は部署異動または退職勧奨のいずれかの選択を迫られるというものです。


※以下参照
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111014-00000005-jct-bus_all


同社は斬新な社内制度を次々に打ち出すことで以前から有名です。今回についても明確な数字を決めて退職勧奨を制度に組み込むのは珍しいケースだといえますが、もちろん制度がもたらす効果については賛否両論あると思われます。


個人的に気になったのは、「退職勧奨」の一般的な認識についてです。



法律的な言い方をすれば、退職勧奨とは、使用者が労働者に対して行う労働契約の合意解約の申込(あるいは申込の誘引)のことをいいます。分かりやすく言えば、会社が従業員に「退職しませんか?」と誘うことです。

もちろん退職勧奨に応じるかどうかは労働者が自分の意思で決めればいいことであって、法的には応じる義務は全くありません。

また会社は、いつでも、どんな理由でも、誰に対しても退職勧奨を自由に行うことができます。単なる合意退職の申込なので当然といえば当然です。

ただし、退職勧奨を明確に断った従業員に対して、その後も執拗に退職勧奨を続けるのは公序良俗に反し違法性がでてくると考えられます。

退職勧奨の方法についても、威圧感を与えたり、従業員の自由意思を阻害するようなやり方は不法行為を構成し、後で損害賠償の請求を受けたり、退職を無効とされる可能性があるため会社側は注意が必要です。

例えば、面談で退職勧奨を行う場合には、時間は短めに30分程度、回数も多くて3回までに留めるべきですし、場所は狭い密室ではなくできれば開放された所で、会社側は2名以上の複数で臨むべきでしょう。大きい声で威嚇したり、解雇を仄めかして脅すなどは論外です。



つまり退職勧奨はやり方次第では退職強要(実質解雇)とみなされ、逆に適法に行われる限りは本来従業員にとって不利益はないということです。
(退職を勧められたことによる精神的・心理的ショックは別として)

そして、勤務成績や能力不足を理由に労働者を解雇する場合には、会社は明確な目標を示して再度十分な改善指導・教育を行ったり、配置転換を行うなどの解雇回避努力が求められます。

結局どのような人事制度をつくったとしても、それによって会社が従業員の退職を容易ならしめることはできません。



なお、単なる退職の誘いではなく、低評価者に対して会社を続けることが困難な雰囲気を匂わすことにより、従業員に緊張感を与えることを意図して退職勧奨を制度に組み込むという考え方も当然あり得るわけですが、法的問題やリスクをクリアするのが前提であり、安易な考えでそのような制度を導入することはお勧めしません。




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