労働者の過半数代表者選出を見直す時期にきている

最近、労働問題について何かとニュースに取り上げられるワタミが、36協定の締結方法について不正があるとして労働基準監督署から是正監督を受けていたのは記憶に新しいところです。

以下の記事参照
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012060102000216.html


労使協定の労働者側における当事者である過半数代表者は、本来挙手や投票などの民主的な手続きによって、全ての労働者の過半数の支持を得て選出されければならないのですが、今回報道されたワタミのように、会社が都合のよい人物を指名してその労働者と形式的に労使協定を結び協定書を作成して労基署に届け出る一方、多くの労働者はそんな協定の存在さえ知らないというケースは実は少なからずあるのではないかと思えます。

これはおそらく、代表者をどう選出しようが現実には残業代不払いや不当解雇のようにダイレクトに労働者に不利益を及ぼすような問題とはあまり考えられない点(実質はさておき)、さらに監督行政としてもそれほど労使協定を重要視していない現状に起因するものと考えられます。現に36協定を含む労使協定をそもそも作成すらしていない違法状態の企業の存在を周りからよく耳にします。

企業としても、労使協定の代表者を投票によって選ぶという物々しいことは、労働者の権利意識を呼び起こすことにもつながりそうで、会社には全く利益はなさそうだから避けたいというのが本音だと思われます。

36協定の代表者選出が適法に行われなければ当然その協定は無効です。36協定が無効であれば1分たりとも労働者に残業をさせることはできません(災害時等は別ですが)。労使協定の締結は労基法に違反しないという免罰効果を発生させますが、不正な手続きによる協定では免罰とはならず、会社および経営者は刑事罰を免れないということになります。


記事によると

厚生労働省は五月十八日付で全国の労働局に、労基署で三六協定届を受け付ける際、労働者側代表の選出方法について不正な疑いがあれば、窓口で確認を取ることを徹底するよう通達を出した。

とあります。

今までなあなあにやってきた企業も、これを機に代表者選出手続を適正なものに見直すべき時期に来ているものと思います。

さらに記事では

「今後は、店長が従業員の中から代表を推薦し、書面で過半数の従業員から同意を得る選出方法に改める」と説明した。

とありますが、
この選出方法も実はあまり好ましいものとは考えられません。

例えば店長(or会社)が代表を推薦する前に、従業員に立候補者や推薦者を募ったり話し合いを促すなどして、何も動きがなく話が前へ進まないなどで会社が推薦者をたてて主導するなら別ですが、最初から会社が候補者名を挙げて同意書を回すというやり方は、即違法とはいえないまでも、場合によっては労働者側の代表者選出に関する任意性を担保できず、違法性をおびてくる恐れも十分に考えられる為、誤解を生むやり方はお勧めはできません。


ちなみに代表者選出にあたっては、何の為の代表者選出なのか、つまり労使協定の締結当事者を選ぶのか、あるいは就業規則変更の意見聴取を行う為の代表者を選ぶのかを明らかにしたうえで手続きを実施しなければなりません。

もちろん労働者代表は協定の締結当事者ですから、締結の拒否も含めて労働者を代表しているということにもご注意ください。



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