高年齢者雇用安定法改正の経過措置の具体的運用

希望者全員を65歳まで雇用義務化という法改正

「改正高年齢者雇用安定法」の施行がいよいよ4月に迫ってきました。

計画的に行動している企業は着々と就業規則の改定作業を進めていると思います。

大手などは法改正で増加する人件費に対応する為、全体の昇給カープを抑える賃金制度の再構築のために何度もシミュレーションを繰り返し、あるいは今年からの新卒採用の要員計画を見直していることでしょう。

一方で、まだまだ手つかずという会社も少なからずあるはずです。



今回の法改正には経過措置がありますから、何もやっていないという会社は今すぐに動くべきです。

なぜかと言えば、これまで労使協定によって選定基準を定め再雇用する労働者を絞ってきた会社については経過措置で基準を残すことができるわけですが、その条件は法施行前の3月31日までに就業規則に規定した場合に限られるからです。一刻も早く就業規則の「定年」条項に経過措置を織り込んだ文言を加える改定作業を始めることです。



さて、今回の法改正に係る就業規則、労使協定の運用に関して、2〜3注意点を書こうと思います。


経過措置によって労使協定の基準を段階的に残していくのですが、この段階というのは今年から2025年にかけて厚生年金の支給開始年齢が3年ごとに1歳ずつ引き上げられていくのに合わせていくということです。

① 平成25年4月1日〜平成28年3月31日 61歳
平成28年4月1日〜平成31年3月31日 62歳
平成31年4月1日〜平成34年3月31日 63歳
④ 平成34年4月1日〜平成37年3月31日 64歳

一見すると分かりづらいですが、それぞれの期間内においてその年齢以上の労働者を労使協定の基準の対象とすることができます。

それぞれの期間においてそれぞれの年齢に達する方の生年月日をみると、

① 昭和27年4月2日〜昭和30年4月1日
② 昭和29年4月2日〜昭和32年4月1日
③ 昭和31年4月2日〜昭和34年4月1日
④ 昭和33年4月2日〜昭和36年4月1日

ということになります。



また、労使協定の基準は改正法施行の4月以降どのような基準を用いていくかですが、今まで使っていた基準をそのまま使っていっても全く差し支えはありません。その場合には協定を結び直す必要も特にありません(有効期間が切れていなければ)。

一方、これまでのように定年時点での基準を適用するのではなく、

「再雇用以後の勤務評価が平均●以上」

というような経過措置ならではの基準の適用も可能です。労使協定ですから、労使が合意していれば基本的にはどのような基準でも(法の趣旨に反しなければ)大丈夫だと思います。この場合には、基準を実際に適用するのは経過措置の年齢に達した時点になります。


ただし、厚労省の指針で定められている継続雇用の例外(※就業規則に定める解雇、退職事由と同一の事由を継続雇用しないことができる事由として別に定めることができるとされているもの)を就業規則に規定した場合、労働者がその事由に該当するかどうかを判断するのはあくまでも定年に達した時点です。経過措置のそれぞれの段階の年齢に達した時点ではありませんので一応ご注意ください。





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