インターンシップの違法性と注意点

近年、インターンシップに参加する学生は本当に増えています。

インターンシップの活用は、企業ニーズと学生の抱くイメージのミスマッチの回避につながりますし、企業側は選考過程に組み込んで優秀な学生を採用するチャンスを得られるなど様々なメリットがあります。


しかし、インターンシップを使うのであれば、その法的な問題点にはぜひとも注意しておかなければなりません。


勘違いされている方もいますが、インターンシップとはあくまで「就業体験」であって労働ではありません。「試用期間」だとか「OJT」などとは根本的に異なるものです。

もしインターン実習生の就業実態が労働基準法上の労働者に該当するということになれば、労働関連諸法令が適用され、最低賃金の支払い義務が発生するほか、実習中に起きた事故や災害・ケガ等について労災保険を適用させなければならなくなります。

なかにはインターンシップを「低賃金 or 無償でこき使えるアルバイト」のような感覚で利用する悪質な「名ばかりインターン」も現実にあって問題視されています。


では、どういう場合にインターンシップは違法となるのか、企業はどんな点を注意すればよいのかについては、行政通達でインターンシップの労働者性について、ある程度明確にされています。


1.実習生が企業から指揮命令を受けているなど、使用従属関係が認められる場合
2.実習生が本格的に業務を遂行するなど、生産活動に従事している場合(作業による利益・効果が会社に帰属する場合)


これらに該当すれば、労基法上の労働者とみなされる可能性が高いといえます。

さらに、以下の事項は労働者性が肯定される判断材料となります。

3.実習生に支給される手当が、一般従業員の賃金とあまり変わらない水準の金額である場合
4.会社の規則に違反した実習生に制裁が課されている場合
5.一般従業員の就業場所と区別されず同じ場所で現場実習が行われている場合



ここまで読んでお分かり頂けると思いますが、インターンシップを適法に運用することは実際、企業にとって相当にハードルが高く、事実上ほとんど実習生に「仕事」をさせることはできません。

常に実習生の横で指導・教育を行える担当者を配置するなど、十分な人的余裕が企業になければそもそもインターンシップは成立しないのです。

内容についても見学や説明をメインとし、現場・生産ラインに入らせる場合は本当に軽度の補助的な作業にとどめなければなりません。

例えば、営業などは会社の利益に直結しますから、せいぜい担当者の横で見学する程度にすべきですし、電話応対や接客についても指導者が横について監督している状態で体験的に試してみる程度にとどめ、実習生が独立して行う事のないようにすべきです。製品の製造やPCを使った製作は当然ながら生産活動に該当しますし、資料を作成する程度であっても、その資料が業務で使われるのであれば生産活動とみなされます。


「そんな実習は物理的に無理だ」
「そんな薄い体験では意味がない」

ということであれば、悪いことは言いませんがインターンシップという形式はとらずに、短期のアルバイトとして雇用し、最低賃金以上を支払い、労災等を含めた使用者としての責任を全て負うかたちの方がよいと思います。


ちなみにインターンシップが認められた場合(つまり労働者性が否定された場合)、労災保険の適用は不要となりますが、そのこととは別に企業には安全配慮義務が求められることになるので、実習生のケガや病気、死亡事故、その他セクハラ・パワハラ等に関して企業側の過失が認められた場合には損害賠償責任が発生する可能性があります。この点は注意です。

逆に学生側も、企業の保有する機器・施設等に対する損害、機密保持等に関し賠償責任が生じ得るということを忘れてはいけません。




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