名ばかり管理職を甘く見てはいけない
つい最近ですが、知り合いの同業者の関与先で従業員から残業代を請求されるトラブルがありました。
未払い残業代を請求されるにもパターンは色々ありますが、今回のケースは、会社が管理職にしていた社員が実態は管理職じゃないとして支払われていなかった残業代を請求してくる、いわゆる名ばかり管理職問題です。
名ばかり管理職はマクドナルドの店長が訴えた訴訟が有名なので、知らない人はほとんどいないものと思われます。マクドナルド事件は高裁で和解が成立しており、会社側の敗訴的和解と言われてはいますが、この問題で最高裁の判断はでていません。
しかしながら、全国のサービス業チェーンは気が気じゃないことでしょう。それまでは管理職が当たり前だった店長を管理職からはずすことを検討する企業も多かったと聞きます。
そして2日前、以下の2つのニュースを見つけました。
某コンビニの店長が管理監督者の実態がなかったとして東京地裁が時間外手当支払いを命令
http://www.asahi.com/national/update/0531/TKY201105310500.html
某大手ミシンメーカー支店長3人が管理監督者にあたらないとして残業代の支払いを求めて提訴
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_date2&k=2011053100388
名ばかり管理職祭りでしょうか。
一応ですが、労働基準法が残業代を支払わなくてよいといっているのは、管理職ではなく、管理監督者です。(もっと正確にいえば「監督若しくは管理の地位にある者」労基法第41条)
会社の定める管理職が法律上の管理監督者に該当するのかどうかの基準はザックリ言うと以下の3点です。
- 職務内容・権限と責任(労務管理について経営者と一体的立場)
- 出退勤について厳格に管理されていない
- 地位にふさわしい待遇(基本給や手当、賞与など)
要するに、従業員を採用・人事評価・昇格・降格・解雇などができて、何時に出勤して何時に帰って何日に休むとか自分である程度決められて、かつ残業しまくっている非管理職よりも給料が高いということです。
この基準どおりに判定すると、法律上管理監督者として認められるのはいいとこ部長以上でしょう。現実的に企業にとって厳しい基準です。
それもあってか、名ばかり管理職問題は実際のところ甘く考えている企業が多いという実感です。
よくあるのは、管理監督者としてのマネージャー業務よりプレーヤー業務のほうが多いとか(プレーヤー業務は3割以内に抑えるべき)、従業員全体に占める管理職の割合が多すぎるとか(25%を超えると多いという印象)。あと、給料の逆転現象は避けるべきなのは言うまでもありません。
はっきり申し上げて、名ばかり管理職問題は勃発すれば会社はかなりの確率でキツイ状況に追い込まれます。何しろ労働基準監督署は長時間労働や未払い残業代と並んでこの問題を重視しています。裁判にでもなろうものなら相当に厳格な基準で管理監督者性を判断されることになります。加えて主張立証責任は会社側にあります。
思い当たる方は1日も早い行動をお勧めします。
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