定年再雇用後の労働条件をどう定めるか<高年法改正>

来年4月の改正高年齢者雇用安定法の施行に備えて各企業は賃金体系や就業規則を見直す必要があるのは当然ですが、60歳以降の労働条件をどう設定するかという点は非常に重要になってきます。

これまでもそうでしたが、基本的に定年再雇用後の労働条件に関しては、会社は労働者の希望する条件を満たさなければならないというような義務はありません。

この点、高年法には継続雇用制度の内容について具体的な定めは一切なく、当事者同士の合意に委ねられていることになります。高年法の趣旨・目的を踏まえたうえで、合理的な裁量の範囲内において企業の実情に合致した労働条件を提示すればよいわけです。

ですから合理的な労働条件を提示したが結果的に会社と労働者との間で合意が得られず、最終的に労働者が継続雇用を拒否したとしてもそれが法違反ということにはなりません。

「企業の実情に合致」した条件ですから、例えばパートなどの短時間勤務であったり、正社員よりも労働日数が少ない労働条件であったとしても、それが必ずしも合理性がないとはなりません。


最も気になるのは、賃金水準をどの程度低下させられるのか、その許容ラインだと思いますが、職務内容が定年前と定年後で変更になるのであれば、職務の重要性によって賃金が変わることは十分合理的と考えられます。ただし、現実的にあまりにも労働者の勤務する意思を削がせるような労働条件の提示は高年法の趣旨にも反しますし、労使トラブルの火種にもなりますので会社ごとに相応の配慮が必要だと思います。

また、職務内容をそのまま変えずに賃金を低下させる場合には、均衡待遇、同一労働同一賃金の問題から公序良俗に違反するのではないかという考え方がでてきます。過去の判例では、たとえ同一の職務であったとしても、定年到達時の賃金から少なくとも4割低下した場合でも不当ではないとされてます。さらに同判決では、再雇用制度を導入している企業の多くが定年到達時の年収の6〜7割から半分程度を予定して制度設計していることを例に挙げて該当事案を言及していたことから、50%程度までの賃金低下は認められる可能性も高いのではないかと考えられます。

確かに高年齢雇用継続給付が60歳時点の賃金が61%以下に低下したケースを制度に組み込んでいることから、法的に4割までの低下は予定されていると考えるのが自然ですが、職務が全く同一なのに4割低下までOKという考え方はちょっとどうなのかと思うところでもあります。

基本的にはやはり定年前と定年後で職種は同一であったとしても職務の内容はある程度変更し、権限・責任や人材活用の仕組みに明確な差を設け、場合によっては労働日数・時間数を減らした上で賃金を低下させるべきであると思います。もちろん定年後も実力に応じて第一線の主力として雇用するため賃金は低下しないということであればそれに越したことはありませんが、その場合の雇用形態や賃金・人事体系についても明確に就業規則雇用契約書に規定しておく必要があることはいうまでもありません。




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