契約社員はもはや「いつでも切れる」労働者ではない<雇止め法理の法定化>

労働契約法改正について、ニュースなどで話題になっているのは、5年超えた場合の無期転換の話ばかりのように感じますが、実際のところ無期転換ルールは企業の意識に影響を及ぼしません。実は無期転換ルールは重要ではありません。

企業にとって必要な人材であれば5年経過後も無期雇用として会社に残す(or 5年経過を待たずに無期雇用に転換させる)、必要でないと判断されれば5年経過前に契約を打ち切る、そうやって企業は人件費増加のリスクを回避しますから、現実には雇止めの数が増えるだけだと思います。(もちろん長期勤続の契約社員にとっては大問題ですが、あくまで企業側視点で。)


今回の労働契約法改正でとにかく重要なことは、「雇止め法理」が条文に明文化され、制定法化されたということです。(※この改正点は、8月10日に既に施行されています。)

これによって、今後有期雇用契約の更新が打ち切られた場合には、

1.契約更新の繰り返しによって無期雇用と実質同じ状態にあるとき

あるいは

2.状況的に更新されるという合理的な期待が認められるとき

のどちらかに該当するケースであれば、実質解雇とみなされ、解雇の場合と同様に合理的な理由のない雇止めは無効と判断されて、それまでの有期契約が更新されたものとみなされます。

この法理は法改正以前も判例法理によって運用されてきたものではありますが、今回の制定法化によって不当な雇止めの法的根拠が明確化されましたので、今後多くの雇止めに係る労働紛争が予想されますし、現実的に企業に与える影響(労働者に与える影響はともかく)は無期転換ルールの比ではありません。

にもかかわらず、この事をきちんと理解していない企業関係者が何と多いことか、という実感です。


改正労働契約法(雇止め法理)が施行されたいま、契約社員を常用的に使用し都合のよいときに契約を打ち切るという雇用の調整弁的な使い方には限界があるということを認識しなければなりません。


・各企業にとって有期雇用とはどのような位置付け、雇用区分なのか。
・有期雇用を使う目的は何か(無期でなく有期を使う必要性)。
・有期契約労働者としての職務(無期労働者との違い)


今こそこれらをハッキリと決めるべきです。もちろん有期雇用はどうあがいても正社員の代わりとはなり得ません。




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