アメリカの外食産業に過労死がない理由

こんな興味深いコラムを見つけました。

アメリカの外食産業に過労死がない理由とは?」
アメリカの外食産業に過労死がない理由とは? | 冷泉彰彦 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト


内容を簡単にまとめると、アメリカの外食産業に過労死がない理由は以下の9つになります。


1.役割分担がはっきりしている。

2.仕事は契約書に記載されてあることだけやればいい。

3.他人の仕事をやってあげることは、その仕事を奪ってしまうことになるので禁じられている。

4.低賃金の仕事なので、皆それぞれ目的をもち腰掛けと割り切って働いており、長く勤めるつもりの人は皆無。

5.本部などの経営層や管理職になるにはMBAなどの学歴が必要で、現場から叩き上げで昇格できる可能性はゼロ。従って将来の出世を人質に無理な働き方を強制されることはない。

6.店長は業績に応じた歩合制でノルマ未達成なら解雇という処遇。従って上司から詰められることもない。

7.店員もチップ制によってモチベーションを高めて収入を稼ぐ方式なので、固定給を前提にノルマ達成を迫られることがない。

8.サービス水準が低く、客を待たせても、注文の料理が遅くても、冷めていても、謝罪を求められることがないため、ストレスが溜まらない。

9.会社は従業員控え室に労働法規の一覧と最低賃金額を記載したポスターを掲示する義務があり、労働法規違反があれば労働者が弁護士を雇って訴訟に持ち込み巨額の賠償を求められる恐れがあるため、法令順守のプレッシャーとなっている。



アメリカの飲食店の店員はストレスがたまらない理由が色々とあるようですが、日本と比べた場合のポイントは雇用の流動性と法的リスクの違いではないでしょうか。

というのは、日本の外食産業においてもウェイターや調理場などの一般店員はアルバイトや非正規雇用が多く、実際に過労死が起こり得るのは正社員である店長クラスではないかと考えられますが、上記の9つの理由の大半は非正規の一般店員に当てはまる項目であり、店長クラスに該当しそうなものといえば、「6」と「9」だと考えられるのです。

アメリカでは飲食店の店長が目標未達成で解雇されたとしても、また他の店にいけばよいという流動性の高い環境が備わっており、雇用保障や長期勤続・出世と引き換えに身を削って会社に奉仕するという考えにはならないのでしょう。

また、アメリカは言わずと知れた訴訟社会ですから、会社が違法行為を行えば、従業員から容易に訴えられるということが企業への抑止力になっていると思われます。日本の場合の労働規制は大企業にとっては国際競争の足かせとなっていますが、多くの小売・サービス業、外食産業、および中小企業においては実質無法地帯、サービス残業やらせ放題、クビ切り放題という現実が少なからずあることは否定できません。これは脆弱な監督行政に起因する部分もありますが、訴訟行為に出た場合の労働者の負担の大きさが最大の原因であることを考えさせられるコラムでした。




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