社会保険に加入しなくてもよい非常勤役員の判断基準

労災や雇用保険と異なり、社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金)は役員(取締役・監査役)でも加入することができます。逆に言えば、社会保険は強制加入の公的保険であり、役員といえども加入するかしないかを自身では選択はできず、必ず加入することが義務付けられています。

ここでよく言われるのは、非常勤役員であれば加入の必要がないということですが、単に名称が「非常勤」というだけで加入が免除されるわけではなく一般の労働者と同様に勤務の実態で判断されることになります(※逆に非常勤役員と判断されれば加入したくてもできないのが原則です)。ではどんな要件を満たせば社会保険上の非常勤役員として認められるのでしょうか。


社会保険では、適用事業所に常用的に使用される者が被保険者となりますから、一般の従業員の場合は労働時間が週30時間以上(正確には1日または1週間の労働時間および1ヵ月の労働日数が通常の労働者の概ね4分の3以上)という基準を使って加入の可否を判断します。

ところが役員は労働者ではないため労働時間という概念がそもそもありません(労働契約ではなく委任契約を交わしています)。そのため一般的には以下の基準を使って判断されることになります。

・経営に携わっているか
・役員としての業務執行権を有しているか
・役員会議への出席の有無
・報酬額は妥当か


「なんて抽象的な基準だ」と思う方が多いでしょう。そもそも非常勤役員という言葉自体、非常にあいまいな言葉なんですが。

ここで注意したいことは、これらはあくまでもおおまかな目安に過ぎないということです。

実はこの非常勤役員の定義については、法令や行政通達などのはっきりした統一的な基準がないのです。ですから、管轄の年金事務所によって判断基準が微妙に違ったり、文言は同じだがニュアンスが違うなんていうことは珍しくありません。担当者レベルで判断が分かれることもよくあります。

ではどうすればよいのか。

一応考え方のポイントとしては、来ても来なくてもよい人かどうか、で判断するとよいでしょう。

会社に来ても来なくてもいい役員が会社の経営に携わっているとは到底言い難いし、そのような役員に対して支払われる役員報酬は実質的に「業務執行への対価」とはいえず、一般常識で考えて報酬の額も低めでなければ不自然です。来ても来なくても許される役員が、気が向いて会社に出勤したときにたまたま役員会が開催されていて出席することはあるのかもしれませんが、毎回出席してる状況だとちょっと不自然だと思われます。

ちなみに「代表取締役社長」に関しては明らかに業務執行権を有していると考えられますので、非常勤として取り扱うことは原則できません。

なお、非常勤役員として社会保険に加入させていなかった役員が社保調査(年金事務所会計検査院による社会保険調査)などの際に、「実態として常用的使用関係が認められるため非常勤といえない」と判断されれば、そこから2年間さかのぼって加入させられ保険料を徴収されることになるので、勤務実態を考慮せず名前だけ非常勤役員にして安易に社会保険からはずすべきではありません。




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