派遣法改正の余波と人材派遣企業の動き

今年の3月28日に可決、成立した改正労働者派遣法の施行日が10月1日に決まりました。

http://www.47news.jp/CN/201206/CN2012062701001243.html


当初法案にあった「登録型派遣の原則禁止」と「製造業派遣の原則禁止」はどちらも削除され、骨抜きの改正と批判されていますが、今回の改正法は30日以内の期間を定めて雇用する日雇い派遣を原則禁止しています。これは派遣元と派遣先双方とって実質かなり厳しい規制となります。

さらには「グループ企業内派遣の8割規制」、「離職した労働者を離職後1年以内に派遣労働者として受け入れることを禁止」、違法な派遣が行われていた場合に派遣先に適用される「直接雇用申込みのみなし規定」(※改正法施行日の3年後に施行が延期されました)など、企業にとって相当に影響のある事項を多く定めた法改正であり、決して軽く考えられるものではありません。


違法派遣の場合の「みなし雇用」制度については、「雇用契約申し込み」義務を定めたに過ぎない現行法下においても多くのトラブル、訴訟が起こっている状況を考えると、3年後の制度施行後はみなし雇用の有効性をめぐってさらなるトラブルの増加が予想されます。

この辺りは、2年前に実施された専門26業務適正化プランもかかわってくるところでしょう。26業務に該当しないものと判断されれば、派遣期間3年オーバーであれば即違法、みなし雇用となる可能性もあるわけです。派遣先企業にとってこのインパクトは大きいです。



法案成立後、派遣先となっていた企業の多くは今後の直接雇用を見据えた行動を進めているものと思われます。

派遣社員を直接雇用に切り替えた場合には、労働保険や社会保険の加入、給与計算や源泉徴収、その他労働基準法等の労働関連諸法令に係る様々な労務管理、雇用管理が必要となり、事業主としての大きな責任が発生することになります。

他方、人材派遣会社にとっても派遣機会の減少と業績の低下が考えられるわけですが、同時に直接雇用の増加に伴って労務管理業務の需要が増えると見込み、労務管理代行サービスに転換する動きがあるようです。

シスプロ、労務管理代行を強化 派遣法改正にらむ :日本経済新聞

記事によれば、人材紹介企業のシスプロは、顧客企業が求める人材の紹介と、労働条件通知書の発行や年末調整など直接雇用に伴う煩雑な事務手続きの代行を合わせて提供できるサービスを扱っており、顧客企業が負担するコストは従来の人材派遣のケースとほぼ変わらないとのことです。


この記事を読んで思ったことは2つ。

1つは、労働者を直接雇用する事業主の法的な責任と、派遣先企業としての法的な責任の重さは比較になりません。例え発注主が従来と同水準のコストで人材を確保できたとしても、事務手続きを代行してもらえたとしても、事業主としての法的責任が軽減されるわけではありません。ともすればこの点において「派遣=(紹介+事務代行)」と誤解される可能性が否定できないことには懸念を抱きます。


2つ目は、社会保険労務士としての立場からいえば、労務管理代行というサービスは社労士と業務が少なからず重複するということです。気を引き締めなければなりません。

しかしながら、前述の人材紹介企業の公式サイトによると、「雇用業務代行」と称して以下の記述が確認できます。

労務管理業務

入退社、転勤、転属などの管理、各種保険対応、法的申請等労務全般の業務を代行します。

入退社、転勤転属管理   社会保険対応

入退社時諸手続き     労務上法的申請対応

入社時各種手続き業務

雇用保険資格取得/社会保険資格取得/通勤手当、給与振込口座

これらは社労士法第2条に定められた業務が含まれており、仮にこれらを会社が業として受託すれば明らかに社労士法違反ということになり、社労士会が目を光らせなければいけない点だと思います。




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