「解雇要件の緩和」と「金銭解決ルール」は根本的に違うはず

最近の政府が行う解雇規制緩和議論の報道をみていると、何だか色々なものが混同されていてきちんとした議論ができているのか疑問です。(実態が正しく報道されていないのかもしれませんが)「解雇をしやすくして雇用の流動性を」みたいなことが盛んに言われ…

早くも表面化。労働契約法「改悪」の余波

4月1日から改正労契法が施行されています。これでいよいよ有期契約労働者は、更新によって通算期間が5年を超えた時点で無期転換申込権を獲得できるようになったわけです。当然ですが、この法改正をうけて多くの企業は契約社員の更新年数に上限を設けるであろ…

「残業代をきっちり払わせれば勤労者の所得は2割上がる」のウソ

「労基局がまともに機能するだけで、日本の個人所得が2割上がることが判明」このような見出しで最近ネット上で話題になっているのを見かけました。その話題の元になっていたのが、以下の記事です。 「名指し賃上げ要求」よりも、残業代をきっちり払わせよ h…

ユニクロ報道をみて思うこと<サービス残業問題の本質>

先日、東洋経済で「ユニクロ 疲弊する職場」と題して、現場社員(主に店長クラス)の壮絶な長時間労働、過酷な労働環境とそれらに起因する高い離職率の実態が公開され、大きな波紋を呼びました。※記事はこちら http://toyokeizai.net/articles/-/13101 この…

「準正社員」「賃金を抑え解雇しやすく」中途半端な政策でお茶を濁すのか

安倍内閣に代わってからというもの、「解雇規制緩和」への流れが加速しているように感じます。それ自体に異論はないのですが、気になるのは何とも中途半端なというか、意味不明というか、またしてもグダグダな政策が進行中のこの状況です。まずは具体的なニ…

解雇規制の緩和は、企業の人事権・業務命令権の低下と引き替えである

政府の有識者会議で、「正社員を解雇しやすくすべきだ。」という意見がでて、ネットを中心に話題になっているようです。 「正社員を解雇しやすく」 安倍政権の有識者会議で議論 http://www.asahi.com/business/update/0307/TKY201303060639.html 正社員を解…

40歳定年制論者はそもそも有期雇用と定年をごっちゃにしている

昨年の夏、国家戦略会議の繁栄のフロンティア部会が「40歳定年制」を提言してからというもの、テレビや新聞、雑誌などで40歳定年の話題をよく目にします。東京大学大学院教授の柳川範之氏が推進しているようです。※参考までに柳川教授の主張 http://www.nikk…

裁量労働制の落とし穴

裁量労働制を導入したいという依頼を企業から受けることがあります。裁量労働制とは、端的に言えば、法律上決められた一定の手続きを踏むと、現実に何時間働いたとしても、ある決まった時間働いたものとみなすことができる労働時間制度です。しかし、経営者…

高年齢者雇用安定法改正の経過措置の具体的運用

希望者全員を65歳まで雇用義務化という法改正「改正高年齢者雇用安定法」の施行がいよいよ4月に迫ってきました。計画的に行動している企業は着々と就業規則の改定作業を進めていると思います。大手などは法改正で増加する人件費に対応する為、全体の昇給カー…

固定残業代(定額残業代)の翌月への繰越

毎月固定の残業代を支給する手法は中小企業を中心に定着しつつあると思われます。何時間分の残業代としていくらを支払っているのかを明確にしたうえ他の賃金と区別し、実際の残業が定額分を超過した場合の差額を毎月きちんと支払っていれば、固定残業代は違…

自転車通勤の法的リスク・問題点

ここ数年、自転車で会社に通勤するという方は急増しているように感じます。自転車通勤に切り替える理由としては、「健康を考えて」、「通勤ラッシュが嫌だから」、「エコだから」、あるいは「会社に電車通勤で申請しておいて支給された定期券代をフトコロに…

女子高生 添い寝・マッサージ店 労働基準法違反で摘発

先週、都内の個室で18歳未満の女子高生に添い寝やマッサージなどの過激なサービスを行わせていたという店舗が、労働基準法違反容疑で警視庁から一斉捜索をうけたという目をひくニュースがありました。「女子高生「添い寝」の店一斉捜索=秋葉原など17店、…

健康診断を受診しない社員に対するペナルティ

ちょっと古いニュースですが。「健診受けないと賞与15%減ローソンが来年度から導入 」 http://www.sponichi.co.jp/society/news/2012/12/24/kiji/K20121224004840370.html 業務の忙しさなどを理由に健康診断を受けなかった社員とその上司に対し、翌年の賞…

会社から労働者に対して損害賠償請求はどの程度可能かを考える

会社が従業員に対して行う損害賠償請求の最も典型的な例は、従業員が会社の車を運転中に事故を起こすケースです。このケースでは有名な裁判例があり(茨石事件)、労働者の過失で自動車事故を起こし会社に損害を与えた場合であっても、会社が労働者に請求で…

内定辞退は法的に許されるか

最近の企業の厳選採用と、熾烈さを増す新卒の就活においては、少しでも多くの企業に応募し、複数の内定を得てから入社する企業を選ぶというのは当たり前でしょうが、同時に内定を辞退する行為は避けて通れないことになります。内定を辞退する際は少しでも早…

「有能な幹部には年俸制」という勘違い

佐賀県の武雄市が有能な職員を幹部に抜擢し、「年俸制」を導入することによって幹部の育成と活性化を図るというニュースがあります。「佐賀・武雄市が年俸制導入へ 幹部候補を育成」 http://www.nikkei.com/article/DGXNASJC06001_W3A100C1ACY000/ このよう…

「イクメンは出世できない」はあながち間違っていない

昨年末くらいから伊藤忠商事の社長がプレジデント・オンラインで書いた「『イクメン、弁当男子』は、なぜ出世できないか」というコラムがかなりの反響を呼んでいました。※詳細は以下の記事を参照 全文表示 | 「イクメン」「弁当男子」は出世できないのか 伊…

不当労働行為の救済命令を無視

企業が不当労働行為の救済命令に違反した場合には、法律で罰則が定められていますが、今回はそんな形式的な話ではありません。 牛丼チェーン「すき家」を運営するゼンショーが、団体交渉拒否について謝罪し、解決金を支払うことで労働組合と和解したというニ…

最低賃金の廃止が受け入れられない理由

先日、日本維新の会が選挙公約として掲げネットを中心に物議を醸した「最低賃金の廃止」ですが、あまりの批判にさらされてか早くも最低賃金廃止が撤回され、「市場メカニズムを重視した最低賃金制度への改革」という訳の分からない文言へ修正された模様です…

解雇予告と同時に休業命令はアリなのか

会社が労働者に対して解雇を通告する場合には、30日前に予告するか、または30日分の平均賃金を解雇予告手当として支払うかのどちらかが必要なのはよく知られています。実務上は解雇予告手当の支払いを選択する方が圧倒的に多いかと思います。ところが、この…

「新卒一括採用の廃止・見直し」は土台無理か

新卒一括採用について、就職活動の激化や既卒者の就職難の原因になっているなど様々なデメリットが指摘されており、見直しが必要ではないかという問題提起のニュース記事がありました。 新卒一括採用は見直すべきか - ライブドアニュース 新卒時の1回にチャ…

腰痛は労災として認められるか

現実問題、腰痛の労災請求がかなり厳しいのは確かです。なぜなら、一般的に労災認定を受ける為には、業務とケガ・病気との間に因果関係が認められる必要があるわけですが、腰痛の場合、本当に業務が原因なのかどうか特定するのがかなり難しいからです。(※腰…

固定残業代を運用していても違法は違法

今月は11月なので毎年恒例の「労働時間適正化キャンペーン」が実施されています。この時期は労働基準監督署が残業代不払いについて結構厳しく取り締まります。多くの企業が是正勧告を受けて支払いを命じられることになります。 そんななか、先週こんなニュー…

多くの会社でずさんな月額変更

社会保険労務士という職業柄、様々な会社の社会保険手続きの実態をみることになるわけですが。実感としては、従業員の入社・退社時の得喪手続きや、お金の支給や免除を受ける為の手続き(傷病手当金、労災、育児休業関係)などは割と問題なくできているよう…

突然言い出すから問題になる契約社員の更新拒否(雇止め)

一般的に契約社員は雇用の調整弁と考えられており、必要な時に必要な人員だけ更新をして、業務が減り必要がなくなったら契約を即打ち切るという使い方をされているパターンが大多数だと思われます。しかしこの運用は、そもそも有期契約が臨時的・一時的な業…

インターンシップの違法性と注意点

近年、インターンシップに参加する学生は本当に増えています。インターンシップの活用は、企業ニーズと学生の抱くイメージのミスマッチの回避につながりますし、企業側は選考過程に組み込んで優秀な学生を採用するチャンスを得られるなど様々なメリットがあ…

週刊新潮 定年再雇用記事でコメントしました

本日発売の週刊新潮 「サントリーが制度化でも「65歳定年制」の短所・難点・デメリット」の記事でコメントしました。 今回の記事の発端はサントリーHDが来年からの高齢法改正に先立ち、いち早く定年を65歳に引き上げる旨を発表したことです。※詳しくは以下の…

給与計算は税理士、社労士、アウトソーシング会社、どこに委託すべきなのか

自社の給与計算業務を外部にアウトソーシングしようと考えた場合、委託する相手の選択肢は税理士、社会保険労務士、給与専門のアウトソーシング会社など色々考えられますが、一体どこに頼むべきなのかいまいち判断しかねるものと思われます。率直にいって従…

業績改善プログラム(PIP)を使った解雇は日本では通用しない模様

外資系企業がリストラのためによく使うと言われる「業績改善プログラム(「Performance Improvement Program」通称:PIP)」という手法があります。退職勧奨に応じないリストラ対象の社員に対して目標を与え、面談を繰り返して達成状況を確認しながら指導を…

健康保険組合の編入の実際

健康保険と言えば、一般的に中小企業は全国健康保険協会が運営する「協会けんぽ」に加入しますが、グループ企業や同業種の企業が集まって運営する健康保険組合は協会けんぽよりも保険料が安いなどのメリットがあり、編入したいというお問い合わせをいただく…